手作り石けんを作る際の注意事項

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石鹸を作る際の注意点1:水酸化ナトリウム

手作り石鹸に欠かせない水酸化ナトリウム(一般名称:苛性ソーダ)は、「劇物」であるという点を良く考えておかなくてはなりません。「毒物及び劇物取締法」で指定されている薬品であるため、18歳以上で本人確認書類と印鑑を持参しなければ売ってもらえないほどです(住所氏名などの記入と押印だけで本人確認書類の提出が無い場合もあります)。

石鹸がアルカリ性であるのは、水酸化ナトリウムのようなとても強いアルカリを混ぜるからで、アルカリというのはタンパク質を腐食させる作用があります。タンパク質を腐食って何?と思うかもしれませんので説明すると、簡単に言えば皮膚や粘膜を侵す(溶かす)と考えてください。苛性ソーダの「苛性」とは激しく反応する性質を表しており、苛性ソーダは名前からして非常に危険であると認識しましょう。

水酸化ナトリウムを扱う上で最も危険なのは

「肌に触れる」「目に入る」「蒸気を吸う」など、体で直接触れてしまう場合です。

石鹸をつくる過程で水に水酸化ナトリウムを溶かしますが、強く反応するために水溶液が飛び散ると非常に厄介で、肌や粘膜に触れると化学やけどを起こします。そして、化学やけどと一般のやけどの何が違うのか知っておくのはとても大切です。

一般のやけどは熱によって起こるため、冷やして熱を奪うと進行が停止します。しかし、化学やけどである水酸化ナトリウムによるやけどは、化学反応が止まるか物質を除去しなくては止まりません。化学反応を止めるには理屈上は酸で中和できますが、強酸を肌に掛けるなどとてもできませんし、中和反応には熱を伴いますから、家庭でできる対処としては流水でひたすら洗い流すのが最も早い方法です。そして必ず医師の診断を受け、水酸化ナトリウムによってやけどしたことを伝えます。

こういった危険があるので、水酸化ナトリウムの取り扱いには、手袋、ゴーグル、マスクといった基礎的な防備は必須で、できあがる石鹸は溶けても弱アルカリで危険性はありません。ただし、反応しきれなかった水酸化ナトリウムが残留していると、アルカリ性が強くなって危険が高まりますので計量は正しく行います。油(脂肪酸)が多くなっても油っぽくなるだけですが、水酸化ナトリウムが余ると危険だということです。

可能なら水酸化ナトリウム水溶液を作るときだけでも、外に出て行った方が良いでしょう。

外で行うときには、風下に自分がいると蒸気を吸う可能性があるので注意します。家の中なら換気扇を回した近くで行うようにします。また、絶対にやってはいけないのが、水酸化ナトリウムに水を足す行為で、水に水酸化ナトリウムを少しずつ溶かすのが正しい方法です。

石鹸作りで最も危険なのが水酸化ナトリウムを水に溶かす工程で、それをクリアできれば他の工程はそれほど問題ないため、十分に注意する心構えが重要です。

石鹸を作る際の注意点2:法規制と責任の所在

色々と難しいことを書いたので読むのが面倒な方は下記のまとめを見てください!

合成界面活性剤を使いたくない、無添加の石鹸を作りたい。こういった理由で石鹸は手作りされますが、作った石鹸の品質について全く意識しなくて良いわけではありません。もちろん、自分で作った石鹸を自己責任において使う事は咎められないでしょう。

■問題となるのは、手作り石鹸を人に譲る、販売するなど自分以外の人が使う場合

まず、譲るだけでも問題は多いと議論されますが、販売するのは確実に多くの問題があります。
石鹸は大きく分けると、身体用石鹸と家庭用(洗濯や台所で使う)石鹸に分かれ、身体用の石鹸については薬事法によって規制されており、身体用の石鹸を製造・販売するためには許可が必要です。家庭用の石鹸であっても家庭用品品質表示法によって表示義務があり、簡単な話ではありません。

無許可で身体用の石鹸を製造・販売したとなれば法律違反、家庭用として表示義務を守らずに販売しても法律違反。それでは手軽に石鹸を販売する道が断たれるように思えますが、残されている道は「雑貨」として販売する方法です。ただし、雑貨として石鹸を販売したいとなれば、体に使えることを連想させてはいけません。つまり建前上は、売る方も買う方も雑貨としてやり取りする前提です。

ここで、本来手作り石鹸を作る目的に戻ってみましょう。体に使ってもらうことを考えて石鹸を作っても、売る場合(譲る場合)には雑貨です。考え方によりますが、体に使う目的で作った石鹸を雑貨として売ること、また、もし買った人が体に使った場合、その人の自己責任と捉えるかどうか。それは個人の判断になるとはいえ、作る側の本意ではない場合がほとんどです。

■次にアルカリ性(pH:ペーハー)の問題

いかに上手にできた手作り石鹸であっても、自分で使ってとても良い感触であっても、他の人にとって刺激物ではない保証は全くありません。肌の強さは人によって違いますから、使ってみるまでその効果はわからないのが実際です。

刺激はアルカリ性の強弱によっても違い、一般にアルカリ性が強くなるほど刺激も強くなります。そのため、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)成分が石鹸にならずに残っていると、水に溶けた時のアルカリ性が強くなり刺激があります。人によっては市販の石鹸程度のペーハーでも影響するので、手作り石鹸のように品質にバラつきがあるものは、それだけ危険性もバラつくということです。

ましてや、使用者の自己責任で使ってもらうなど難しく、何かトラブルがあったときに作った側の責任は重いものです。それが販売したとなれば更に重くなります。ですから、自分以外の人が使う石鹸を手作りするのは、トラブルを抱える覚悟を持っておかなくてはならないでしょう。

まとめ:自分で作った石けんは自分で使おう

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