石鹸は日常で良く見られ、固形石鹸だけではなく、いわゆる「ソープ」と名のつくハンドソープやボディソープも通常は石鹸成分が入っています。石鹸の正体とは一体何なのでしょうか?
■ずばり脂
石鹸の定義は、脂肪酸+アルカリによる脂肪酸塩(えん)という物質で、では脂肪酸とは何かと言えば、ずばり油(脂)と考えてもそれほどおかしくありません。
ではアルカリとは何かというと、少し理科を思い出すと必ず勉強している「酸」と「アルカリ」です。
水酸化物イオンを含みますが、説明すればするほど難しくなってしまうので、酸性、中性、アルカリ性という3つに分かれた性質のうち、強い酸性と強いアルカリ性は危険という程度の知識で十分です。
石鹸の原料が油であることに少し驚くでしょうか。石鹸を濡らさずに触った時に、何となくロウソクのロウのような触感があるのに気付くはずです。ロウも脂肪酸からできているので触感が似ているのです。そして、石鹸は脂肪酸+アルカリなので、アルカリ成分を酸で除去して脂肪酸だけを取り出し、芯を付けて固めれば簡易ロウソクのできあがりです。石鹸とロウは親戚のようなものですね。
また、石鹸を水に溶かして混ぜるとブクブクと泡が出てきますし、シャボン玉を作る溶液にもなります。今でも合成洗剤を嫌って石鹸を溶かして洗濯に使う人はいますが、昔は手洗いで洗濯をするための洗濯用の固形石鹸というものがありました。
この泡ができたり、汚れを落とすことができたりする成分を界面活性剤と呼び、石鹸が持つ特性の1つです。界面活性剤は水にも油にもなじむ性質があるので、石鹸は台所用の洗剤と同じように汚れを落とすことができるというわけです。
色々な種類があるように見える石鹸だが…
石鹸を区分けしてみると、用途では身体用、台所用、洗濯用、形状では固形、粉末、液状といったところでしょうか。全て石鹸だとしても製法によっても違いますし、成分も異なっていきます。
手や顔・体を洗う石鹸は、洗う部位によって頭髪用・浴用・洗顔用・手洗い用などの違い、呼び方も化粧石鹸や薬用石鹸と色々と名前を変え、これらは化粧品か医 薬部外品のどちらかで厳しい法規制があります。台所用と洗濯用は、雑貨工業品という扱いなので、両者は法律上も完全に区別されています。
実は厳密な意味からすれば、石鹸というのは、脂肪酸をアルカリ(水酸化ナトリウム・水酸化カリウム)と反応させてできた「脂肪酸塩」という意味しかありませ ん。
単純に石鹸の成分が唯一の石鹸と呼べる存在で、それ以外は石鹸ではないということです。
石鹸ではないが石鹸と呼ばれるもの
しかし、世の中には石鹸と呼ばれる製品がたくさんあって、一般的な石鹸という言葉の解釈まで広げると更に範囲が広がります。石鹸と呼ばれるからには、界面活性剤が石鹸(石けん、石けん分、石けん素地など)でできているかと言えば必ずしもそうではなく、石鹸成分を含まないのに石鹸と呼ばれるものだってあるのです。
例えば、ハンドソープを洗剤だと認識して手を洗っている人は少ないでしょう。しかし、ハンドソープが石鹸であるかと言えば、石鹸を含まない合成界面活性剤のハンドソープは多くあり、そういった「石鹸ではないが石鹸と呼ばれるもの」も世の中にはあるということですね。